2025/11/20 10:57

チャイを知る


今や誰もが知っているチャイ。

日本で市民権を得たのはもう何年前のことでしょうか。
少なくとも私が初めてインドを訪れ、チャイを飲んだ頃、
まだ日本で「チャイ」という言葉は一般的ではありませんでした。

チャイはCTCと呼ばれる紅茶を牛乳で煮出し、お砂糖をたっぷり入れた甘いミルクティーのこと。

CTCは「「Crush(押しつぶす)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)」の3つの工程の頭文字を取った製法で作られた、粒状の茶葉で、香りはあまりありませんが、色が濃く出るため、牛乳で煮出すのに最も向いています。

日本では「チャイ」はスパイスの入ったものと認識されていますが、本来はスパイスは入っておらず、スパイスが入ったチャイは「マサラチャイ」と呼ばれています。
「マサラ」は種々のスパイスをブレンドしたもの。
つまり「マサラチャイ」が本来の意味での「スパイス入りチャイ」ということになります。

ジンジャーパウダーを入れたチャイが「ジンジャーチャイ」
蜂蜜を入れれば「ハニーチャイ」
ターメリックを入れた黄色いチャイ、「ゴールデンチャイ」なんてのもあります。

ちなみに「チャイ」の本来の意味は「お茶」。
だから、「チャイティー」と言ってしまうと、「お茶お茶」という日本語訳になってしまうんですよね。


チャイの本場はネパール、インド


ネパールやインドでは、チャイは日常的に飲まれています。
街角でも家でも。
朝、昼、おやつ、夕刻。
ひと休みしたいとき、小腹が減ったとき、お喋りしたいとき、
みな気軽にチャイを口にします。
ティーカップなんて使いません、小さめのグラスで熱々をゆっくり味わいます。
たとえ灼熱の時季でも蒸し蒸しとした雨の時季でも、熱いチャイを飲むのです。

気候も環境もハードなネパールやインドでは、
熱くて甘いチャイは大事なエネルギー源だからです。

それともうひとつ。
ネパールもインドも世界的な紅茶の国。
毎年凄まじい量の紅茶がネパールとインドから世界中へと輸出されます。
けれど良質な茶葉はほぼ外国へいってしまうため、ネパールやインドの人々は高品質な茶葉で紅茶を飲むことができません。
そこで低地で生産しやすく、安価なCTCで紅茶を淹れるのですが、CTC自体は風味が弱く色だけが濃いため、もっと美味しく飲むために牛乳で煮出すようになったのです。
やがてそれが一般市民に広がり、ネパールやインドの日常に溶け込んでいきました。

労働者階級から生まれたチャイでしたが、本当に美味しい。
牛乳や乳製品好きが多い日本人にとっては、ハマってしまうのは必然だったかもしれません。

ちなみに「チャイ」はインドでの呼び名で、ネパールでは「チヤー」といいます。



様々な国で飲まれるチャイ


ネパール、インドで散々チャイを飲みましたが、

実は、私が初めて「チャイ」と呼ばれるお茶を飲んだのは、トルコでした。
トルコでは、どこへ行ってもチャイが出てきました。
が、ミルクティーではなく、ブラックティー、つまり紅茶です。

装飾を施した、優美な曲線の小さなチャイグラスに鮮紅色のお茶が注がれ、ガラスのソーサーの縁に大きな角砂糖がふたつ。
うんと甘いそのチャイを、大人の男性が美味しそうに飲むのです。
私は最初のうちは甘くして飲んでいましたが、旅が進むにつれ、その甘さに辟易し、砂糖を入れずに飲むようになりました。
トルコの人たちからはずいぶん不思議な顔をされたものです。

エジプトでも同じようにチャイがありました。
ついに煮出したチャイに出会ったのはケニアでした。
その後、インド、ネパールへとチャイの旅が続くのです。

ネパール、インドではチャイの茶葉であるCTCを生産している、まさに本場ですが、チャイをより多く飲むのは、パキスタンやバングラデシュというのも非常にユニークな話です。

このようにチャイは多くの国で愛されているのです。



チャイの現状を考える‌


私がバックパッカーだった頃、ネパールでもインドでもどこでもチャイが飲めました。

カトマンズの街角で、バラナシのガートで、チャイおじさんが路上でチャイを作っていて、一杯20〜30円(10円くらいのときもあった)で気軽に飲むことができたのです。
茶屋もたくさんあり、どこのお店にもチャイがありました。

が、今、環境は大きく変わっています。

ネパールについていえば、
カトマンズでは街が整備され、路上のチャイ屋さんは姿を消しました。
その代わり、オシャレなチャイスタンドを見かけるようになり、若い女性から人気。
同時に空前のコーヒーブームで、それまであった茶屋はスタイリッシュなカフェになり、日本のカフェのようなメニューがズラリ。

美味しいチャイを飲ませてくれるお店はずいぶん少なくなってしまい、本当に残念な気持ちです。
けれど、それが経済発展の道筋なのでしょうか。

チャイの魅力は、今や、日本のみなさんの方がしっかりご存知なのかもしれませんね。

大丈夫、
紅くろでは本場以上に美味しいチャイをいつでもご用意しています。

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